経営戦略 : 「ズバリ!経営戦略立案」 IT化経営戦略 事業戦略のバイブル



前回は「経営成熟度−その1」で経営成熟度とは何かと経営戦略との関わりについて取り上げました。経営成熟度の経営戦略に及ぼす重要性が概ねご理解いただけたと思います。 そこで今回は経営成熟度に影響要因と成熟度の高め方を「経営成熟度−その2」として取り上げます。

はじめに、経営成熟度が経営戦略に及ぼす影響要因を取り上げて見ましょう。企業には商品やサービスを提供する業務プロセスによる社内の企業行動としての活動があり、対外的には顧客や社会との評価される顧客取引や社会性としての組織機能としての活動があります。
成熟度レベルの観点から見ますと“成熟度が高い企業”というのは個人や組織の行動が社内外ともに合理的で、その結果として高品質の商品やサービスを提供出来る仕組みを有している企業が「成熟度が高い企業」となりそうです。 その点を少し考えて見ましょう。

■社内で組織や個人が合理的に行動できるためには、経営方針が周知徹底され、その方針に基づいた業務プロセス実施の標準化、改善サイクルが定着している必要があります。 たとえば、衆知であるトヨタのカンバン方式は品質や低コストの製品を作り出す標準の業務プロセスを構築していますし、セブンイレブンの商品仕入れ、棚割り、顧客対応にも顧客のニーズを発見し、充足させる仮説検証のプロセスがあります。

■社外に対して組織が合理的に行動できるためには、顧客や社会、市民が納得できる行動をとらなければなりません。そうでないと、社会的批判を浴び円滑な企業活動ができなくなるからです。そのためには法律や社会性における“コンプライアンス(法令順守)”活動が前提であることと企業活動を対外的に伝えて、顧客や社会が企業活動を理解できる“ディスクロージャー(開示型)”のメッセージが必要になります。
ちなみに、1兆円以上の時価総額を創造した企業、武田薬品、NTTドコモ、キャノン、日産、信越化学工業の共通的特徴は「積極開示型」でした。

成熟度はこの両面の合理性によって成し遂げられます。ですから、成熟度の高い企業には

●「ディシジョンツリー的な線形方組織ではなく、ネットワーク構造を持つ職場関係がお互いに協力し合う正のネットワークを形成している」

●「外に向けた開放性は高く、且つマーケティング環境からの企業の方針と異なる作用が有用か有害かを判断し、錯乱を防ぐシステムを形作っている」等の特性が見られます。

このような文化に発展した企業特性をもつ成熟度の高い企業では社会的不正や円滑な業務遂行の阻害はより低く抑えられることになります。
それでは、このような成熟度の高い企業へステップアップするための方法を取り上げてみようと思います。
たとえば、成熟度レベル2「反復実施」のレベルのある経営課題テーマを有している企業を想定しましょう。この企業が成熟度レベルを高めるための方策は、

手順1:到達したい経営課題テーマの成熟度レベルを設定します。
たとえば、成熟度の目標レベルをレベル4「管理された」に設定したとします。この成熟度レベルに到達するにはレベル3「定義された」がこの間にあり、このステップを実践しないと到達できないことになります。 そのために、

手順2:成熟度を上げるために必要なキープロセスエリアを見つけ、そのプロセスの目標を設定します。
 たとえば、経営課題テーマを「システムの構築」を成熟度レベル4にすることとしましょう。このテーマでの業務プロセスには「計画」「設計」「実装」「運用」とあります。
「設計」「実装」「運用」の業務プロセスは成熟度レベル4であったとします。しかし、「計画」プロセスは文書化もされず、レビュー体制も無い成熟度レベル2の状態であることが判明したとします。この「計画」のプロセスがキープロセスです。目標はレベル4にすることです。


手順3:レベル2のキープロセスエリアをレベル4に上げるための制度と体制を組織化します。
 すなわち、計画の手順、成果物のレビュー組織化等の制度と実施の仕組みづくりを実施することになります。

手順4:制度と実施仕組みをルール化、標準化します。
 すなわち、計画の手順書、計画の仕様書、作成ツール等を作り教育および実践活動を標準化します。

以上の手順を実施して、このキープロセスエリアを成熟度2から4へ高め、全体の「システムの構築」プロセスの成熟度レベル4へ高めていくことになります。

第9回はここで終了します。経営成熟度が企業経営活動にとって非常に重要な要素であることはご理解いただけたと思います。 次の第10回からは経営戦略を策定する上で参考にすべき経営戦略論を取り上げます。経営戦略論とは何かの観点で「経営戦略論」をテーマにしようと思います。


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前回は「経営戦略策定プロセス」で経営戦略を策定する手順、すなわちプロセスとその考慮すべき要件を取り上げました。経営戦略策定の概略の手順はご理解いただけたと思います。
そこで今回はこの経営戦略を策定する際のもう一方の重要な柱である「経営成熟度」を取り上げます。
経営戦略は経営活動の観点から見ると競争優位のための仕組みづくりです。仕組みは人が関与することで機能します。企業活動で捉えますと、企業機能は購買、生産、販売、経理等に該当し、仕組みは○○事業部、購買部、製造部、販売部、経理部、そこに構成される社員ということになります。経営目標を達成するにはこの仕組みを有効に機能させる社員や組織の能力が必要です。 その能力とは、業務を満足に遂行できる社員や組織の能力と顧客、取引先や市民に対するコンプライアンス(=法令順守)や社会性の高さがあります。この能力があって、はじめて経営戦略を効果的に遂行できるわけです。
この能力を「組織の成熟度」又は「経営成熟度」と言います。

能力には通常、能力レベルがあるように経営成熟度にも成熟度レベルがあります。
日本経営品質賞委員会の資料を参照すると、この成熟度を6段階に分類しています。
「存在しない」「初期」「反復実施」「定義された」「管理された」「最適化した」の6段階を定義し、それぞれを成熟度レベル0,1,2,3,4,5に対応付けています。

■成熟度レベル0「存在しない」
 組織が経営課題に対して認識すらない段階です。したがって、組織プロセスは存在しません。たとえば、社会的不正を組織ぐるみで実施している段階はこのレベルです。

■成熟度レベル1「初期」
 組織は経営課題に対する必要性を認識しています。このレベルも標準の組織プロセスはありませんが、必要に応じて個別に対応している段階です。たとえば、セキュリティのためのIDやパスワードは提供しているが、問題が発生するまで更新の対処を行っていないため、対処できる人を都度大騒ぎして探し対処するレベルです。

■成熟度レベル2「反復実施」
 標準手順も研修も無いが、経営課題に対し個別の手順がある。 その有効な手順を実施・指導する人がおり、教わった後進はその手順を反復実施できるレベルです。たとえば、システム設計の手順を徒弟制により訓練している段階はこのレベルに相当します。

■成熟度レベル3「定義された」
 課題解決手順は標準化され、文書化されており、社員への周知徹底のために教育され、また手続きは遵守されていますが、この手続きが客観的に有効であるかを判定するレビューの仕組みは存在していません。したがって、経営方針・目標の下に実施した達成度が未達であった場合、その原因を究明せずに次の新たな目標を設定する組織のレベルです。しかし、このレベルは企業が組織活動していく上において基本となるレベルです。

■成熟度レベル4「管理された」
 継続的なプロセスの改善と改定ができるレベル。すなわち、組織のプロセス機能は周知徹底され、その結果を監視し、課題解決のための対処が実施される。たとえば、目標売上が未達成の原因分析がある周期を持って実施され、改善のためのフィードバックループが出来上がっている組織レベルであり、定期的に改善が施されることになります。
企業としてはこの組織活動レベルが期待されます。

■成熟度レベル5「最適化した」
 改善のフィードバックループが継続的になされている組織状態です。たとえば、トヨタのカンバンでの改善は毎日、数百件の提出改善の対策がなされるそうです。このような状態は個々人が改善のフィードバックループを実践できる能力を持っているし、そのように高める組織の学習能力があるわけです。このようなベストプラクティス状態のレベルです。

第8回はここで終了します。経営成熟度とは何かについて取り上げました。次の第9回では経営成熟度に影響要因と成熟度の高め方を「経営成熟度―その2」のテーマとします。


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前回は「経営戦略策定の考え方−その1、2」で経営戦略の最終目的である収益の向上に結び付ける戦略策定の考え方を取り上げました。経営戦略を作成する上での考え方はご理解いただけたと思います。
そこで今回はこの経営戦略を作成するための手順である「経営戦略プロセス」を取り上げます。
経営ビジョン、経営方針の後で、経営資源の最適配分し、経営目標を確定する「経営戦略策定」があることはお伝えしてきたとおりです。

経営戦略を策定するために、まず最初に実施すべきことは
■「現行の経営状態把握」です。
現行の経営ビジョン、方針、目標、戦略、施策とその成果(事業の売上、利益等)および達成/未達成分野を把握します。現行の経営状態把握ができると、次は

■「経営環境の把握」です。
経営環境は「外部環境」と自社の経営力を現す「内部環境」があります。
・「外部環境」には‘PEST’、すなわち政治(Political)、経済(Economic)、社会・文化(Social)、技術(Technical)といったマクロ環境と業界、競合、市場(顧客)と言ったマクロ環境があります。これらの外部環境を分析することで今後収益の可能性を見込める「機会分野」と今後収益が低下する可能性のある「脅威分野」を捉えることが出来ます。
・「内部環境」にはひと、もの、かねの経営資源、販売、生産、経理といった企業活動の機能としての経営組織等があります。この内部環境を分析すると収益を高めたり、落としたりしている商品、社員のスキル、サービスの質等を支える個別や組織としての企業力が見えてきます。すなわち、収益を高める「強み要因」や収益を落とす「弱み要因」が判別できることになります。
以上のように外部環境と内部環境の分析ができると、経営戦略を立案します。

■「経営戦略の立案」
経営戦略は経営環境を効果的に組み合わせることで、顧客価値を高め、大きな収益を上げることができます。すなわち、外部環境の収益の可能性を見込める「機会」と内部環境で収益を高める「強み要因」を組み合わせると、他の組み合わせより収益を高める拡大の戦略が取れるわけです。たとえば、外部環境としてe−Japanという政策が実施されています。ITのネットワークインフラ作りが大きなテーマです。高速回線によるネットワーク技術を有している企業にとってはe−Japanは「機会要因」であり、技術は「強み要因」です。高速回線のネットワーク技術要員や販売力を増強すれば、より大きな事業収益が確保できると予想できます。「ネットワーク技術要員の強化」や「販売力強化」が経営戦略となるわけです。
経営戦略案ができると、これを企業として実施する決断を下し、最終的な経営戦略とする意思決定が必要になります。

■「戦略的意思決定」
経営戦略案はいくつもの案が作成されます。その中には投資を積極的に実施し収益を向上させていく積極案と投資はあまり行わず現行の利益率を堅実に維持していく消極案が出てきます。どちらを選択するかは経営者の価値観にあります。
経営者はその戦略案が経営理念に基づき社会的責任をまっとう出来ることをアセスし、採用すべき経営戦略案に意思決定を下すことになります。
たとえば、ヤフーBBの孫氏や日産のカルロスゴーン氏は積極的経営者の部類であると思われます。
このようにして、自社の想いや能力に合った経営戦略が選定又は修正されて、実施されることになります。

第7回はここで終了します。つぎの第8回では経営戦略を実施する上での組織の能力としての「経営成熟度」をテーマとします。



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前回は「経営戦略策定の考え方−その1」で顧客/市場をみた観点での策定の考え方として「顧客価値の創造」を起点に経営戦略の最終目的である収益の向上に置き換えて戦略策定の考え方を取り上げました。 
そこで今回は「経営戦略策定の考え方−その2」として自社内の観点での戦略策定の考え方を取り上げてみようと思います。
考え方−第4で経営資源の「選択と集中」を取り上げました。この選択と集中のもとに収益向上の基本的考え方―第5「最適資源配分」です。

■収益向上の基本的考え方―第5は集中した経営資源が「最適資源配分」されることです。選択と集中で経営資源の配分分野を決めましたが、過剰な投資で赤字になったり、業務プロセスに無駄が出るようでは意味がありません。顧客価値最大と経営効率最大の交点として経営資源の配分を決定すべきです。 すなわち、戦略は顧客価値最大と経営効率最大が均衡する交点として最適な資源配分とすべきです。

■収益向上の基本的考え方―第6は「戦略と業務プロセスの整合性」です。競争優位のためのベストプラクティスの業務プロセスによって戦略に基づいた実施と管理を遂行できることが必要です。すなわち、業務プロセスは経営戦略のもとにその戦略遂行のためのプロセスを整合性をもって創るべきものです。

■収益向上の基本的考え方―第7は「知識共有と学習」です。戦略との整合性を持った業務プロセスが作り上げられたとしてもこのプロセスをより効果的、効率的に運用するのは社員自身です。とすれば、この新しい業務プロセスに早急に習熟するための教育の徹底と実施時の不具合に対する改善対策の共有とその伝達が必要な部署、社員に適切になされることです。たとえば、アスクルではインターネットによる販売・配送の業務プロセスを作りました。ここ4、5期に亘って増収・増益を達成しているのは従来の個別訪問販売とはまったく違ったプロセスに対する教育と不具合の改善・実施が効果的に進んできた証かもしれません。

■収益向上の基本的考え方―第8は「継続的改善」です。業務プロセスの改善は「知識共有と学習」によって改善点が共有され、伝達されることで進んでいきます。この改善は継続的に実施されて始めて効果的になります。しかし、それだけでは収益向上の戦略としては不十分かもしれません。経営環境の変化のスピードはますます速くなります。このスピードに対応した方針、目標、戦略の修正を実施することも不可欠になります。すなわち、継続的改善は現場の改善と戦略の修正を見据えたもので無ければなりません。

■収益向上の基本的考え方―第9は「収益性」です。どんなにアイデアとして良い戦略でも収益を伴わない戦略は立案する意味の無いものです。基本的には、前述の8点の考え方の基に経営戦略を策定すれば自ずと収益は付いてくると捉えて良いと思います。もし、収益が出ない事業があるとすれば、8つの考え方のもとに作成された戦略にはどこかに原則とのミスマッチが存在と思われます。早急に改善すべき戦略があることになります。
  
第6回はここで終了します。第5回の経営戦略策定の考え方を含め、第1から第9まで9つの経営戦略策定の考え方をお話ししました。つぎの第7回は経営戦略の策定手順である「経営戦略策定プロセス」のテーマにしようと思います。



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